模試が終わって、教室で自己採点。
一段落ついてから携帯を開くと、一通のメール。
会長さんからでした。
受信時間は、会長さんの乗る電車の発車2分前。
時計を見ると、今から駅に向かえばその次の電車には間に合いそう。
最近は会長さんも、普通の男の子なんだなって思わされることが多かったの。
会長さんと仲のいい集団の中では、厳粛で堅実で、動かざること山の如しだという認識で通っていたんだけど。
だからまず、私と付き合ったっていうのは一世を風靡したのよね。
クラスにひとりくらいいる、十中八九恋愛に興味なさそうな人。
普段の会長さんなら、電車が来たら乗るし、待つなんて有り得ない。
けれど、会長さんに眠る独占欲が目覚めつつあるのは感じていたから、待っててくれないかなってちょっとだけ期待しちゃったわ。
こう言うのは変なのだけど…。
待っていて欲しくないとも思ったの。どちらかというとこの思いの方が強かったかなぁ。
動かない会長さんだから感じる安定感というか…会長さんいわく‘頑固’なところが好きだから。
変わって欲しくないと思ったの。
それに、待っていてくれれば私は次も期待するわ。待っていてくれるはず、って。
そうするうちに‘どれだけ尽くしてくれるか=愛’っていう風に思い始めてしまう…。
違うと思うの。そんなんじゃ、近づきすぎてエゴとエゴのぶつかり合いになるわ。
相手を尊重して、思いやる気持ち。これが愛の原点じゃないかしら。
それを忘れたくないから、会長さんには変わって欲しくないの。
だから、駅で待たずに先に帰っていて欲しい。
もちろん、会いたいという気持ちはあるけれど…。
会長さんと私は違う人間で。いつも一緒にいることは不可能だし、死ぬときも同じではない。
だから私の人生はちゃんと自分で歩いていきたいの。
恋人は頼れる存在ではあるけれど、頼りきっている存在にはしたくないし、なりたくないもの。
あくまでも、転んだときに手をさしのべてくれる存在でありたいの。
だから転んでも大丈夫だと、勇気を互いに与えられる存在になれば素敵だわ。
いつでも、余裕を持っていたい。
余裕が持てないと沢山のものを見落としてしまうもの。
ときには、会長さんさえも見失ってしまうわ。
「会長さんはどんな人か」は冷静でなければ見極められない。
いつでも、ありのままの会長さんを好きでいたい。
結果、会長さんは先に帰ってました。
ちょっとだけ寂しかったけれど…どこかホッとしたわ。
‘会長さんだものね’
心の中で呟いて、もう一度メールを読んだの。
常に私が傷つかないよう気をつけてくれているのが端々に感じるメール。
ほんわりと、安心したわ。
会長さんならではのこの安心感。
浮ついてないから、自分で歩いてる感じがして。
満たされているという表現は似合わないけれど…。
それでも、好き。


